ノハ、帰国して沖縄に住む。

「ノハ、ヨーロッパに移住する。」というブログでは愛猫とフランスに住んでいたときのことを書いていましたが、帰国して現在は沖縄に在住なので改題いたしました。 こまごまとした、日々のなになにをつらつらと。

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カーテンで仕切られた病室の中で映画を見ていた。

確か『スウィート17モンスター』という映画だった。

会ったことのない内科の先生が来て、検査結果の話をしていた。
たぶん100回以上は同じ話をしたことがあるのだろう。
慣れた感じで、病気についての説明をさらさらとある程度した後、

「急に来て、こんな話してごめんね。ショックだよね、大丈夫?」

と言われ、

「あ、はい。」と答えた。
大丈夫なわけがないが、淡々と他人事のように話す医者の前では泣きたくなかった。

「それじゃあ、これからよろしくね。」と去っていった。

私はまた映画の続きを見たのだが、どういう映画だったか思い出せない。

「1型糖尿病」という病気だった。

1型糖尿病は一生治らない病気だということ。

これからずっと自分で1日4回以上インスリン注射をしないと命を繋げないということ。
血管がボロボロになるので合併症で目が見えなくなったり、足が壊死したり、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいこと。

言われた言葉が頭の中でぎゅうぎゅうになって爆発しそうだった。

お腹には4ヶ月の赤ちゃんがいる。
私はこの子を無事に産んで、成長を見守ることができるのだろうか。

今まで風邪すら引いたこともないのに、まさか自分が糖尿病になるとは想像もしなかった。

まだ若いし、痩せてるし、ご飯だってほとんど自炊で健康に気を配り、毎週ファーマーズマーケットに行っては野菜を買って、足りない栄養素はサプリメントだって飲んでいたのに。
意味が分からなかった。

1型糖尿病とは自分の免疫がどういうわけか自分の膵臓を破壊してインスリンが出なくなる免疫異常の病気らしい。
私の免疫どうした。

遺伝でもなければ生活習慣病でもない。
誰にでもなる可能性があって、10万人に1〜2人の確率で運悪くなる。
そんな確率なら宝くじに当たりたかったな。

沖縄だと人口でいえば10人くらいしかいないじゃん。


内容の入ってこない映画を再生しながら1人で泣いた。
6人部屋の同じ病室にあと1人入院患者がいたので、気付かれないよう声を殺して泣いた。
不安に押し潰されそうで怖くて孤独で、私の人生終わったと思った。

一日に7回血糖値測定+αで看護師さんが回ってくるので、1人で悲しみに浸る時間すら与えてくれない。
こんな日くらい誰もいないところで声を上げて思う存分泣きたかった。
何かしらでこの悲しみを消費したかった。

夜中もインスリンによる低血糖で大量に汗をかいて起きた。
心臓がバクバクして苦しくなり、ナースコールをすると看護師さんがブドウ糖を飲ませてくれて落ち着いた。

翌朝目を覚ますと病室の天井。
やっぱりこれは現実なんだ。
悪い夢じゃなかったんだ。

診断名がついた日。
大丈夫なわけないじゃない。


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暇を持て余すくらいが丁度いいと思うのだ。

暇がなくなればなくなるほどそう思う。



今日の目標

「スーパーに行って、特売品から今日の夕ご飯の献立を考える」

「おばあちゃんに会って、飼ってる猫の話をする」

「お父さんの犬のシャンプーをする」

「ハーブの苗の手入れをする」

「蝶の図鑑を持って公園に行く」

1日ひとつ、こんな感じの目標を立てる毎日だったら最高だなと思う。


無職時代はそんな最高な毎日のはずだったのだが、息をしてるだけで税金の支払いを催促されたり周りのキラキラした世界になんとなくのプレッシャーを感じたりしていて、手放しに自由を享受できなかった気がする。

なんでこんなに社会の役に立ってもないし、ましてや社会の歯車の一員でもないような気がしているのに市民税は払わないといけないんですか!もうほっといてくださいよ!

なんて思っていたのだが、その時はへそまがり絶頂期だったので今社会の仕組みを知ると、そりゃ支払い義務はありますよねなんて思ったりもする。
私も角が取れて面白くない大人になってしまったなと残念に思う。

社会に合わせて生きやすく自分を順応させてきたのかもしれない。


今はきちんと働き、当たり前に納税し、年齢相応働き盛りの30代になりそれに対してなんの疑問も持たないようになりました。
特に不満はありません。

ただこうやってくうちに大切なものをすり減らしていってそうで怖いなとも思っている。

明日は休みだ!
たくさん飲むぞー!
って、ベロベロに酔ってもちゃんと家に着いてパジャマに着替えて化粧は落としてる私、日本代表サラリーマンじゃないですか!
善良で立派な日本市民で納税者じゃないですか!

想像した自分の未来像からかけ離れてがっかりしながらも安心している。



ただ、余裕は持つべきだよね。

余裕のある暇がつまり最強。
私には暇が足りないみたい。


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いいお天気で洗濯物もよく乾くし、
この前買ったバジルとトマトの苗もぐんぐんと天に向かって伸びている。

ほう、こうやって時間はきちんと前に進んでいるのかとなんだか妙に感動していた。

気持ちはスロウに、常に寝起きの状態でふんわりと生きていたつもりでも、ふと気付けば季節は変わっている。

一番寒い時に身をぶるぶる震わせながら洗濯物を干してたのが、ついでに屋上でストレッチするのが気持ちいい季節になったもんだ。

夏はすぐバテるからずっとこれくらいの気温でいてほしい。

これから梅雨に入り、明ければ灼熱の夏が来る。

おいおい、ちょっと待ってよ世界。
まだ先に行くには早すぎるよ。


私は長生きしたいから、もう少しのんびりしていかないかい。

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